ターミナルケアのポイント
ターミナルケアは「身体的」「精神的」「社会的」の3つのケアから成り立っています。それぞれのケアの内容について見ていきましょう。
身体的ケア
薬などで病気の苦痛を緩和したり、食事ができなくなったときに経管栄養(栄養を鼻から胃に直接管を挿入して補給する)を行ったりするケアのことですが、栄養補給は延命治療のひとつでもあるため、「栄養補給を実施するかどうか」や「どんな形で実施するのか」など、患者さんやご家族の意思を確認しながら進めることが大切です。
また、日常生活でストレスを感じないように環境を整えることも身体ケアのひとつです。入浴などで体を清潔に保つこともストレスなく生活するために必要なことですが、自力で動けない場合は介助してもらわなければなりません。入浴介助は介助する方もされる方も体力の消耗が激しいため、患者さんの中には入浴を拒否する人もいます。その場合は無理に入浴をすすめるのではなく、蒸しタオルなどで全身を拭く清拭を行いましょう。
精神的ケア
平穏に過ごすためにはできるだけ普段の生活と変わらない環境を作ることが大切です。介護施設や病院などに入院している場合はどうしても部屋が殺風景になってしまいやすいので、患者さんが大切にしているものや思い出の品を飾ったり、好きな音楽をかけたりなど満足できるような空間にすることがポイントです。
また、死に対する不安や心残りが大きくならないように、ご家族や友人など親しい人と過ごす時間を多く設けることも精神的な安定につながります。死に対する不安や恐怖を拭い去ることはできませんが、孤独を感じながら1人で死んでしまうことがないように患者さんの気持ちを理解して寄り添うことが大切です。
社会的ケア
入院が長引くと経済的な不安を感じてしまい、患者さんのプレッシャーになってしまうことがあります。入院から在宅医療に切り替えるなど、医療費の負担を軽減する方法もあるので、まずは病院のソーシャルワーカーに相談してみましょう。
また、職場で責任のある立場に立っていた人や家族の大黒柱となっていた人は、職場や家族に迷惑をかけてしまう心苦しさや、職場や家庭での立場の喪失、不安や孤独を感じてしまうことがあります。「自分の存在なんてあってもなくても関係ない」とネガティブな思考にならないように、しっかりとコミュニケーションを取るようにしましょう。
ターミナルケアのポイントとは
病気などで死を宣告された人は、「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5段階の心理プロセスを辿るといわれています。特にはじめのうちは「なぜ自分が」という怒りや、死に対する抵抗や恐怖、不安などで精神状態が不安定になりやすくなります。患者さん本人はもちろん、周りにいるご家族や友人もつらい時期ですが、こういった心理プロセスがあることを理解して、心の整理がつくように手助けすることが大切です。「受容」の段階になると大分落ち着いてきますが、だからといって不安や恐怖がすべて取り除かれたわけではありません。病気の苦痛を緩和し、コミュニケーションを取りながら患者さんが望む最期を迎えられるように手を尽くしましょう。
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看護師の役割と必要な心構え
ターミナルケアでは治療よりも残された時間を平穏に自分らしく過ごすことを重要視しているため、看護師には高度な医療技術よりも患者さんをよく理解し気持ちに寄り添うことが求められています。また、回復が見込めない患者さんばかりなので、看護する虚しさ、やりきれなさを感じることが多く、精神的な強さも必要です。
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まずは概要を紹介
ターミナルケアとは、死に直面した患者さんが残された時間を自分らしく過ごし、満足できる最期を迎えるための手助けをすることです。治療で無理に延命するのではなく、平穏に過ごせるように苦痛を取り除き、快適に過ごせるように患者さんの気持ちに寄り添ってケアをしていきます。
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